シラバス参照

授業科目名 環境衛生学実験Ⅱ 
単位数
授業形態 実験・実習・実技 
講義コード 3012 
授業担当者氏名

川上裕司(カワカミ ユウジ)




授業の
到達目標
(ディプロマポリシーとの関連)
1)環境中や食品中から目的とする細菌や真菌を分離・培養するためにはどのような培地を使い,どのような条件で培養すれば良いか判断することができる。
2)環境や食品から分離された細菌をグラム染色して,グラム陽性菌とグラム陰性細菌を
確実に見分けられるプレパラート標本を作製することができる。
3)作製したプレパラート標本を光学顕微鏡で観察することにより,桿菌,球菌,らせん菌,鞭毛の有無など細菌の基本形態を見分けることができる。
4)簡易炭酸ガス培養法(ガスパック法)によって,嫌気性の細菌を分離・培養することができる。
5)環境微生物として重要な乳酸菌と放線菌のごく基本的な分離・培養ができる。
6)環境中や食品中から目的とする真菌(糸状菌と酵母菌)を分離・培養するためにはどのような培地を使い,どのような条件で培養すれば良いか判断することができる。
7)エアーサンプラーを使って,空気中に浮遊する細菌と真菌をサンプリングし,平板培地で培養したコロニーから異なる菌種を単離・純培養することができる。
8)真菌(カビ)のプレパラート標本を作製し,光学顕微鏡を操作して観察することにより,環境真菌として重要な「コウジカビ属」,「アオカビ属」,「クロカビ属」と「それ以外のカビ」を区別することができる。また,これら3属に分類されるカビのうち代表的な2~3種を同定することができる。 
授業概要
環境衛生学(Environmental Healt)とは,人間の健康と疾病の問題を「人間と環境との相互関係」という観点から把握し解明する学問である。この場合の環境は,先天的な遺伝子体質をもち,後天的な加齢,栄養,文化などによって様々な感受性をもった人間をとりまき,その健康状態にいろいろな影響をもたらす物理学的,化学的,生物学的,社会経済学的な因子の総合をいう。一般には,環境衛生学の対象は自然科学的な因子に限られ,更に,環境中に存在するさまざまな物質の分析を通して,環境汚染の仕組みや病原菌による感染症が伝播する仕組みなどを理解し,健康的な社会の構築に貢献する学問である。
 2年次後期で開講した「環境衛生学実験Ⅰ」では,「環境衛生学」の中で重要な位置づけである「感染症」の理解を深めるために,微生物(細菌と真菌)の培養法,観察法,簡易サンプリング法について,実験を通して学ぶことを目的とした。3年次で開講する「環境衛生学実験Ⅱ」では,「環境衛生学実験Ⅰ」で学んだ手法の理解を深め,更に,環境中や食品中から目的とする細菌や真菌を分離する手法,培養法,同定検査法について実験を通じて環境衛生学で大きなウエイトを占める環境微生物について体系的に学習する。感染症の原因となる悪玉微生物と健康増進(免疫力アップ)を助ける善玉微生物が人間生活にいかに深く係わっているかの理解を深めることを目的とする。
環境教育学を専攻した学生として,「健康的な環境作りに環境衛生学がいかに重要な学問分野であるか」について十分理解できるインパクトのある実習内容にしていく。
また,後半では演習を設ける。各班で十分に協議した上で,課題(どのような目的か?)を決め,①調査,②サンプリング,③培養,④コロニー集計,⑤プレパラート標本の作製,⑥同定までの一連の実験を行い,データ解析と考察を行う。 
教育課程内の位置づけ 環境教育学科 専門教育科目 専門応用科目 3年 必修科目 
授業におけるアクティブな特徴
特徴 該当
A:課題解決型学習(PBL)企業、自治体等との連携あり  
B:課題解決型(PBL)連携なし   〇 
C:討議(ディスカッション、ディベート等)   〇 
D:グループワーク   〇 
E:プレゼンテーション  
F:実習、フィールドワーク   〇 
G:双方向授業(ICT活用なし:対話型、リアクションペーパー等)  
H:双方向授業(ICT活用あり:クリッカー、manaba等)   〇 
I:反転授業  
J:外国語のみで行われる授業  
授業計画
第1回 第1回 環境真菌の分離・培養・同定検査法(1)
1)オリエンテーション
環境微生物の取り扱いの注意点。使用培地,器具・機材の説明。
2)生理食塩水の作製とオートクレーブの安全な使い方の復習。
3)PDA平板培地の作製法の復習。粉末培地を秤取り滅菌用瓶へ移し,蒸溜水とCPを添加して,アルミホイルを巻いてオートクレーブにかける。
4)実験Ⅰで保存した真菌の形態観察とPDA平板培地での再培養
5)Aspergillus属,Penicillium属,Cladosporium属カビの代表種の形態観察と平板培地での培養
6)光学顕微鏡の使い方の復習とカビのプレパラート標本の作製法の復習。
7)プレパラート標本の観察,写真撮影,スケッチ。
8)カビの形態観察による同定のポイントを確認しながら覚える。

野菜(キャベツ)からの乳酸菌の分離・培養法(1)
1)各班で持参したキャベツ(半個分)を千切りにして,チャック式PE袋に入れ,塩30gを入れて良く袋もみしてから空気を抜く。実験室に月曜日の夕方まで放置した後,冷蔵庫に来週土曜日まで保存する。
2)普通寒天平板培地(乳酸菌用)の調整<粉末培地を秤取り滅菌用瓶へ移し,アルミホイルを巻いておく>。
3)PDA寒天平板培地とDG-18寒天平板培地(真菌用) の調整<粉末培地を秤取り滅菌用瓶へ移し,アルミホイルを巻いておく>。
4)本日の実験リポートの作成。 
第2回 第2回 環境真菌の分離・培養・同定検査法(2)
1)PDA寒天平板培地とDG-18寒天平板培地(真菌用)の調整<蒸留水を加えてオートクレーブ処理>。
2)前回,培養した平板培地の観察と同定。
3)プレパラート標本の観察,写真撮影,スケッチ。
4)カビの微細形態の観察による同定のポイントの学習。
5)空中浮遊真菌のサンプリングと培養:エアーサンプラーを使って室内と屋外の空気を吸引し,セットしたPDA平板培地とDG-18平板培地に空気を吹き付けることにより,空中浮遊真菌をサンプリングする。平板培地を7日間培養する。
6)土壌真菌のサンプリングと培養:キャンパス内の敷地から土壌(落ち葉を含む上層部)約50gをサンプリングし,ストマッカ―袋を用いて分離し,2種の真菌用培地に塗抹培養する。平板培地を7日間培養する。

野菜(キャベツ)からの乳酸菌の分離・培養法(2)
1)普通寒天平板培地(乳酸菌用)の調整<蒸留水を加えてオートクレーブ処理>
2)前回,保存したキャベツの塩漬けから滲出した液を普通寒天培地で混釈培養する。培養は好気的培養と嫌気的培養(ガスパック法)の両方で行う。
3)ISP寒天平板培地(放線菌用)の調整<粉末培地を秤取り滅菌用瓶へ移し,アルミホイルを巻いておく>。
4)本日の実験リポートの作成。
<自宅での土壌のサンプリングと乾燥処理>
5)自宅の庭または周辺の屋外で,土壌(落ち葉などを取り除いた2~3cm下層部の土壌)約100gをサンプリングする。:乾燥させたもの)
6)土壌を古新聞紙の上に広げて,2日間日陰干しして水分を蒸発させる。
7)これをPE袋に入れて次週の実験に持参する。 
第3回 第3回 環境の真菌の分離・培養・同定検査法(3)
1)ISP寒天平板培地(放線菌用)の調整<蒸留水を加えてオートクレーブ処理>。
2)空中浮遊真菌のサンプリングと培養のつづき:コロニーの計数・単離・同定
3)土壌のサンプリングと培養のつづき:コロニーの計数・単離・同定
4)プレパラート標本の観察,写真撮影,スケッチ。
5)カビの微細形態の観察による同定法について,同定ポイントを確認しながら覚える。
野菜からの乳酸菌の分離・培養法(3)
1)植物性乳酸菌の培養のつづき:好気的培養と嫌気的培養の両者のコロニーの計数。
2)乳酸菌のグラム染色標本の作製:染色したプレパラート標本の光学顕微鏡による観察とスケッチ。
環境細菌(放線菌)の分離・培養・同定法(1)
1)自宅周辺でサンプリングして乾燥させた土壌をガラスシャーレに移し,乾熱滅菌器に入れて100℃で30分間加熱処理する。
2)ISP平板培地の上に加熱処理した土壌をパラパラと振りかけて25℃で7日間培養する。
3)PDA寒天平板培地とDG-18寒天平板培地(真菌用)の調整<粉末培地を秤取り滅菌用瓶へ移し,アルミホイルを巻いておく>。
4)普通寒天平板培地(一般細菌用)の調整<粉末培地を秤取り滅菌用瓶へ移し,アルミホイルを巻いておく>。
5)本日の実験リポートの作成。 
第4回 第4回 環境の真菌の分離・培養・同定検査法(4)
1)PDA寒天平板培地(真菌用)の調整<蒸留水を加えてオートクレーブ処理>
2)普通寒天平板培地(一般細菌用)の調整<蒸留水を加えてオートクレーブ処理>。
3)空中浮遊真菌のサンプリングと培養のつづき:プレパラート標本の観察,写真撮影,スケッチ,同定。同定のポイントを確認しながら覚える。
4)土壌のサンプリングと培養のつづき:プレパラート標本の観察,写真撮影,スケッチ,同定。同定のポイントを確認しながら覚える。
野菜からの乳酸菌の分離・培養法(4)
1)植物性乳酸菌の培養のつづき:染色したプレパラート標本の光学顕微鏡による観察とスケッチ。
2)これまでに行ってきたグラム染色による判定を正確にできるかどうか各自が確認すること。
環境細菌(放線菌)の分離・培養・同定法・抗菌活性試験(2)
1)放線菌の単離・純培養:ISP平板培地に発生したコロニー(放線菌)の計数。
2)放線菌のグラム染色標本の作製:染色したプレパラート標本の光学顕微鏡による観察(写真撮影)とスケッチ。
3)放線菌の抗生物質産生能の探索試験:放線菌株の他の細菌に対するハロー法による抗菌活性テスト。枯草菌Bacillus subtilisを普通寒天平板培地の上に塗抹し,その上にストローと竹串でくり抜いた放線菌のコロニーを載せて培養する。
4)PDA寒天平板培地(真菌用)の調整<粉末培地を秤取り滅菌用瓶へ移し,アルミホイルを巻いておく>。
5)本日の実験リポートの作成。

環境微生物演習に関する班会議
 次週から実施する環境微生物演習のテーマを決め、実験の目的・材料および方法・結果のまとめ方を書いて、提出する 
第5回 第5回 環境細菌(放線菌)の分離・培養・同定法・抗菌活性試験(3)
1)ハロー法による抗菌活性テストの判定:ハローの幅を計測する。
2)観察(写真撮影)とスケッチを行う。

環境微生物演習(1)
1)演習計画書に基づく,必要な培地の作成。
2)班ごとに目的とする培地や器具を使ってサンプリングと培養を行う。
3)細菌用または真菌用の適する寒天平板培地の調整<粉末培地を秤取り滅菌用瓶へ移し,アルミホイルを巻いておく>。
4)本日の実験リポートの作成。 
第6回 第6回 環境微生物演習(2)
1)必要な培地の調整<蒸留水を加えてオートクレーブ処理>
2)培養した細菌または真菌の計数・単離・純培養を行う。
3)細菌はグラム染色を行い,グラム陽性・陰性の同定と桿菌・球菌の同定を行う。
4)真菌はプレパラート標本を作製して,微細形態による同定を行う。
5)本日の実験リポートの作成。 
第7回 第7回 環境微生物演習(3)
1)各班の演習結果のデータ解析を行う。
2)データ解析の結果から、実験計画(材料・手順)が正しかったどうか討論する。
3)更に,実験で得られたデータから何が解かったのか(解らなかったのか)。今回の実験で演習の目的を達成したのか。更に不明な点を補うためには、どのような追試を行えば良いか。十分に討論してリポートに反映すること。
4)本日の実験リポートの作成。 
授業外学修
予習(事前学修)
各授業   2年次の必修科目「環境微生物学」で使った教科書「微生物学~地球と健康を守る~」坂本順司(著)と実験の副読本として使う「参考文献(manabaで公開する)」を読んでおくこと。 
[平均60分] 
授業外学修
復習(事後学修)
各授業   毎回の実験終了後に「本日の実験リポート」を必ずまとめておくこと。各班で実施した共用の実験データについては班長を中心に班員全員で間違いがないかどうか確認し合い、シェアすべき写真などはその日のうちに全員が保持しておくこと。最終実験終了後、総合リポートを提出すること。リポートは必ず「研究成果の証明に役立つ研究記録ノート:RESEARCH LAB NOTEBOOK(コクヨ)」を使って記述すること。また、リポートの末尾に「環境衛生学実験Ⅰ」と「環境衛生学実験Ⅱ」の全ての実験を終えての総合考察
【「環境教育学」における「環境衛生学」の役割について】を必ず記述すること。 
[平均60分] 
評価方法
成績の評価は、以下の3点を総合して行う。詳細については初回の授業(オリエンテーション時)で説明する。
1)平常点(25%)、2)毎回の実験時の質疑応答(15%)、3)最終リポート(60%)
*「実験班ごとのチームワークの善し悪し」と「総合考察がしっかり書けているか否か」について特に重視し,最終リポートに加点・減点して反映させる。 
教科書等
座学(環境微生物学)で使用した「微生物学~地球と健康を守る~」坂本順司(著)裳華房(2,500円+税)を参考書として使用。また、実験操作に必要な説明書、手順書、参考文献はデータとして適宜全員に配信する。 
課題に対するフィードバックの方法
 毎回の実験時に、口頭で解説する。また、必要と思われる参考文献や資料は、manabaで公開する。 
その他
 演習のテーマ、実験手順、データのまとめ方については、第1回~第4回の実習の折に、班ごとに個別に指導する。 
授業担当者の実務経験の有無
 実務経験あり 
授業担当者の実務経験の内容
1)2つの企業において、研究職を37年間務めており、主たる研究テーマは、「環境微生物学」および「環境衛生学」である。また、国立の研究機関や大学の客員研究員を現在も兼務しており、基礎と応用の両方の実務経験が豊富である。具体的には、室内環境において、疾病の原因となる細菌、真菌、ダニ、害虫の調査・検査・対策研究を網羅的に行ってきた。2)これまでの実務経験を活かして座学「環境微生物学」を2年次に講義してきた。更に、座学の内容を理解することを踏まえて「環境衛生学実験Ⅰ」を指導した。「環境衛生学実験Ⅱ」では、更に班ごとに演習のテーマを決めさせて、実験計画の作成~実験法~データのまとめ方~考察法まで指導する。これにより、学生に実践に役立つスキルを身につけさせる。 
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